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タックス・ヘイブンとタックス・イーターを読んでみて

前から気になっていた2冊の本を今週読み終えた。岩波新書の『タックス・ヘイブン』と『タックス・イーター』という本だ。

USCPAの勉強をするまでは、買い物をした際の消費税や自分が勤めている会社がどのような税金対策をしているかについては全く考えたことがなかった。100円を払えば当たり前のように8円を税金としてとられ(平成29年現在)、毎月の給料からはかなりの額の税金がひかれている。人が年老いていくのと同じように、日常生活において”税金”とよばれる国家への上納金が発生することをまるで自然現象のようにとらえていた。そもそも税金というとなんの面白みもない事務作業、江戸時代の年貢のようなイマイチなイメージしかもっていなかった。

はじめて上述の2冊の本を手にした際、その表紙のデザインが岩波新書の白と赤のスタンダードな表紙であったことから学術書っぽい感じの印象を受け一瞬ひるんだが、読んでみると非常に明快でわかりやすかった。我慢して読む類のものではなく一気に引き込まれる内容の本だった。

全世界において生活の隅々から有無をいわさず徴収されている天文学的な額の税金をめぐり、国家や地球レベルでどのようなことが発生しているかが非常に興味深くかかれてあった。AppleAmazonなどの多国籍企業が租税回避の疑いでたびたびニュースになっている。話題としてはよく聞くが実際にどうやって回避しようとしたのかやその背景についての情報はあまり報道されず何となくやきもきしていた。単にお金持ちの会社が法人税を節約しようとして悪事を働いているといった単純な構図ではなく、その背後には生き残りをかけた各国の思惑であったり、経済のグローバル化やIT化による経済活動の質の変化が背景にあることがよくわかった。各国の法律やルールは国境をこえることはできないが、お金は国境をたやすく超えることができる。その点をついた多国籍企業による租税回避や各国によるお金の呼び込み合戦が生々しくて描かれていて面白かった。まったく同じ経済活動をやっているのに売上をたてる国によってとられる税金が全然違うのであれば、より有利な国に売り上げをつけかえたくなるだろう。国によって巻き上げられる税金がタックスイーターで描かれているような使われ方をしているのであればなおさらそう思うだろう。

私のような庶民の人生のあらゆる局面から掠め取った巨額の税金が国家によって不明瞭のまま蕩尽され、毎年のように天文学的な借金が増えている。富裕層や大企業は、法律は国境を超えられないがお金は国境を超えられるという仕組みを利用し国家におさめる税金をなるべく避けようとする。資源や強い産業がない国はそうした租税回避をおこなう富裕層や企業を呼び込み巨額のお金を取り込む。国家のインフラを支える負担は庶民に押し付けられ富裕層や大企業はタックスヘイブンに富を蓄積していく。昨今、世界的な貧富の差が話題になるがこうした仕組みも関係しているのだろうか。全世界で統一された税に関する仕組みができればこうした状況も改善するのかもしれない。が、諜報機関が暗躍し各国の思惑が三すくみ状態となっているような現状では夢物語のような気もする。

このような状態がつづくのであればどの国に所属するかよりもどの多国籍企業に所属できるかが今後全世界の庶民にとって重要になっていくのかもしれない。